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障害年金は老齢年金(通常の国民年金)とは違って、普段の生活の中ではほとんど関わりがありませんが、いざという時には、とても役に立つ年金です。
障害年金について「ほとんど何も知らない」と言う人もたくさんいることでしょう。
障害年金はいざ必要になってから急いで調べても、その内容を簡単には理解できません。
障害年金を受給するためにはどういった手続きが必要となるのでしょうか?
受給要件は基準が複雑です。
正しく理解していないと、例え要件を満たしていたとしても、申請の基準を見誤ったり、書類に不備があったりすると、受給できない場があります。
国民年金制度の障害基礎年金と厚生年金制度の障害厚生年金はどのように違うのでしょうか?
これも、非常に多い質問です。
基本的な知識を得た上で、請求方法を正しく知ることが必要です。
ここでは、障害年金制度の基本的な内容を知ることで、適切に障害年金が受給できるよう、わかりやすく解説していきましょう。
【もくじ】
障害年金には、障害基礎年金と言われる国民年金制度から支給されるものと、障害厚生年金と言われる厚生年金制度から支給されるものがあります。
自営業の人などは国民年金のみの加入で、一定の条件を満たせば障害基礎年金が受給できます。
会社員で厚生年金に加入し要件を満たしていれば、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が支給されます。
では、その受給要件を見ていきましょう。
もっとも一般的な本来支給の障害年金において、受給要件は大きく3つあります。
まず1つ目は初診日要件です。
定義として、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が初診日です。
定義は障害年金において重要で、他にもたくさん出てきますので注意して読んでください。この初診日において、公的年金の被保険者であった場合に初診日要件が満たされます。
つまり、障害年金受給には初診日に公的年金制度への加入していることが条件となります。
国民年金の強制被保険者とは、20歳~60歳の日本国内に住所を有するものです。
年齢範囲外や日本国内に住所を有していなくても、一定の条件を満たせば被保険者に任意でなることは可能です。初診日において、このような被保険者が厚生労働大臣に申し出をして資格を得た状態でなければいけません。
初診日要件はこの他、被保険者であったものであり60歳~65歳の国内に住所がある人が対象となります。
また20歳前に初診日があれば、国民年金に加入していなくても障害基礎年金がもらえる場合があります。
初診日において厚生年金加入している場合には、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も受給できます。
厚生年金の被保険者とは、会社員などで厚生年金の適用事業所に使用される70歳未満のものを当然被保険者といいます。
当然被保険者以外には適用事業所以外に勤める任意単独被保険者等も被保険者になれます。
こちらは会社を通じて加入手続きをし、資格を得ます。
次に2つ目の要件は、障害認定日において障害等級に該当することです。
障害認定日とは初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日、もしくはその期間内に傷病が治った日のことです。
この場合の傷病が治るとは、これ以上改善することではなく症状が固定したという意味で使われています。
障害等級は障害基礎年金では1~2級までですが、障害厚生年金では1~3級までと保障の範囲が異なります。
数字が少ないほど重い症状で、各級の障害の程度はそれぞれ政令で定められています。この障害認定の基準については以下で詳しく説明します。
最後の3つ目は、保険料納付要件です。
保険料の納付は初診日前日において初診日が属する月の前々月まで、被保険者期間の中に保険料納付期間と保険料免除期間が2/3以上であれば受給資格を得られます。
この期間の設定は年金が翌月末日までの保険料納付であるため、障害の原因となるような疾病や負傷を負ってから保険料を納めることで受給資格を得ることができないよう設定されています。
特例として平成38年4月1日までは2/3に満たない場合であっても、保険料を1年間滞納していなければ受給資格を得られます。
ただし初診日において65歳以上である場合にはこの特例は適応されません。
この3要件を満たすことで一般的な本来支給の障害年金が受給できます。
重要なのは公的年金の保険料を被保険者として、納付しているかということです。日常的に滞納などをしていると障害が重くても障害年金の受給要件を満たせません。
もしも金銭的な理由などで保険料を支払えない場合は、保険料免除の申請をしましょう。
免除が認められれば、被保険者期間として計算され、保険料を払っていなくても受給できることがあります。
その他の障害年金の種類と支給要件については後で説明していきます。
なお20歳前障害のような本来支給以外の障害年金では、3要件全てを満たしていなくも受給権が得られる場合があります。
障害年金の支給基準は法令で、どういう人がいつ、どのような状態で、どういう条件なら受給できるか定めています。
しかし、障害の細かな認定基準については法令ではなく、「行政通達」で定められています。
行政通達とは法的に拘束するものではありませんが、行政での障害認定義務はこの通達を基準に行われています。
この通達は厚生労働省などのサイトで確認ができます。
大まかに分類すると、
障害等級1級では日常生活において著しい支障があり、かつ他人の介助を要する場合に該当します。
2級は日常生活に支障がありますが、最低限の生活レベル(簡単な食事づくりなど)ができるレベルです。
3級は労働について時間や職務内容を制限される人を指します。
ほぼすべての症状において障害年金が受給できますが、その傷病がどの等級にあたるのかを判断することは困難です。
傷病の種類よりも、その傷病によってどのような状態にあるかということが重要な判断基準となります。
傷病が初期の症状よりも、治療やリハビリなどを行って良くなる場合もあるため、障害年金の審査では障害認定日における傷病の程度によって判断されます。
初診日ではなく約1年6ヶ月後の障害認定日の状態によって、日常生活や労働条件にどの程度影響を与えるかが障害等級判断の基準となることを知っておきましょう。
障害基礎年金は、国民年金に加入していれば給付を受けられます。
障害基礎年金の額は780,900円に改定率を乗じて得た額で、生計を維持している子どもがいる場合に224,000円加算されます。
子どもがいる妻も加算の対象です(3人目からは加算額が74,900円)。
ここでの子どもとは18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子です(障害が子どもにある場合20歳未満)。
生計を維持しているとは、前年の収入が年額850万円未満であることなどを指します。
また、障害年金に共通して障害等級1級に該当する場合には上記の年金額に1.25を乗じた額が適用されます。
障害厚生年金は比例報酬の年金額で、保険料の支払った額と被保険者期間の月数によって受給する年金額が異なります。
年齢が若い人など短期間の被保険者期間しかない人が障害厚生年金をもらう場合、被保険者期間300月に満たないときは300月とみなして計算します。
加算は65歳未満の生計を維持している配偶者に対して行われます。
障害認定後に配偶者を有する場合にも加算の対象となりますが、障害等級が3級の場合には加算額がありません。また障害基礎年金のように子どもに対する加算はありません。
障害厚生年金には最低保障額があり、障害基礎年金を受給できない場合にはその3/4の額が障害厚生年金として受給できます。
さらに障害厚生年金には年金の障害等級1~3級に該当しない症状でも障害手当金という一時金を受給できます。
この障害手当金は初診日から5年を経過する日までの傷病の治った日において政令で定める症状に該当すれば受給できます。
障害手当金の額は障害厚生年金の約2年分です。これを一時金として受け取ります。
障害年金の種類はいくつかに分かれています。
本来支給の障害年金は、障害年金の受給要件を3つすべて満たすことができた場合です。他の障害年金は主に3つの場合があります。
事後重症とは、受給要件のうち、初診日要件と保険料納付要件は満たしているが、障害認定日において、障害等級に該当していなかった場合です。
後から症状が悪化して障害認定される等級に該当すれば、事後重症として障害年金を受け取れますが、条件があります。
症状の悪化が65歳までの期間でかつ、請求を65歳までにするということです。
ただし、60台前半でも老齢の年金を繰り上げて受け取っていると、支給されませんので注意が必要です。
基準障害とは、先に発症した障害では障害年金の要件を満たさず、発症時期の異なる後発の障害によっても障害年金に受給できないが、この2つの障害を総合的に判断すると障害年金の等級に該当する場合です。
ただし合併後の障害等級3級では受給できません。
後発の傷病を基準傷病と呼ぶため、基準障害による障害年金とされています。
受給要件は後発の傷病について初診日、障害認定日、保険料納付の要件をみたさなければなりません。
また65歳までに障害認定日がなくてはならず、請求した場合に障害年金が受け取れます。
遡及して受給できない点で本来支給の障害年金と異なり、65歳以降でも請求ができる点で事後重症と異なります。
この20歳前傷病とはその名のとおり、初診日が20歳未満である場合に対象になります。
障害厚生年金に加入している場合を除き、20歳未満は納付義務がないので保険料納付の要件はありません。
障害認定日囲碁に20歳に達すれば20歳に達した日、もしくは障害認定日において障害等級に該当していれば要件を満たすこととなります。
こちらは65歳までの期間内に請求が必要です。さらに労働者災害補償年金(労災保険)が受けられる場合支給停止となります。労災保険は業務上のケガや疾病を保障してくれる保険で労働者が加入しています。
また、所得制限もあり、前年の所得によって支給が停止や半額になります。
20歳前傷病は保険料を支払っていなくても受給できる福祉的な側面があるためです。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
---|---|---|
支給要件 | ①初診日 ・被保険者 ・被保険者であったもので国内住所60~65才 |
①初診日 ・厚生年金被保険者 |
②障害認定1級・2級 | ②障害認定1級~3級 | |
③初診日の前日において前々月まで2/3以上納付または1年以内未納なし | ③初診日の前日において前々月まで2/3以上納付または1年以内未納なし | |
本来受給 | 上記3要件すべて満たした場合に支給される | |
事後重症 | 65才の前日までに悪化し支給申請する | |
基準障害 | 後発の傷病(基準障害)が発生し、先発と合わせて65才前日までに等級該当(請求は65才~でもできるが給付は遡及できない) | |
20才前傷病 | 初診日に20才未満で、20才に達した日か65才前日までの障害認定日に等級該当 | |
年金額 | 789,000×改定率 | 比例報酬 |
加算対象 | 子,子のいる配偶者 | 配偶者(3級はなし) |
最低保証 | なし | 障害基礎年金の3/4 |
一時金制度 | なし | 障害手当金 |
このように複雑な仕組みの障害年金は老齢年金よりも短い条文でまとめられています。
そのため、条文から内容を解釈することが困難で、特に障害年金はご自身での請求が難しいことがあります。
家族が代理で請求することもできますが、障害年金の請求手続きではしっかりと内容を把握しなければなりません。
もしも請求に不安がある場合は、社会保険労務士などの代理人を立てることも検討しましょう。
では、順番に請求方法を確認します。
請求をする前の確認事項として、年金の納付状況を確認してください。受給要件で述べたとおり、公的年金の保険料を払っていない場合受給ができません。
初診日がいつであったかを確認するために、受診状況等証明書の取得が必要です。初めて診察を受けた医療機関へ連絡して発行してもらいます。郵送でできる場合もあるので確認してください。
診断書には8つの様式があり、その症状によって違いますので、年金事務所の窓口で入手しましょう。
診断書は障害認定日(初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日、もしくはその期間内に傷病が治った日)以降、3ヶ月以内のものが必要です。
診断書は可能な限り主治医と面談して、どういった内容で作成して欲しいか伝えましょう。
その場で内容を確認し、不備がないか確認することも必要です。
診断書の内容により障害等級認定基準に該当するかが決まってしまうので、ポイントを押さえた診断書の作成をお願いしましょう。
病歴・就労状況申立書は年金事務所や市町村の国民年金担当窓口にあります。
障害等級1,2級は日常生活が困難なレベルですが、特に障害等級3級では就労が困難であることの証明を必要とします。箇条書きでわかりやすく作成しなければなりません。
戸籍謄本や住民票、所得証明などの添付書類が必要です。配偶者や子の加算がある場合にはその証明も必要となりますので、注意しましょう。年金手帳や印鑑・預金通帳写しも持参しなければなりません。
請求は年金請求書(裁定請求書)によって行います。
過去の分も遡及して請求する場合は、障害給付請求自由確認書の作成が必要となります。申請の窓口は年金事務所や市区町村役所、共済組合等です。
行政の手続きは窓口によって様々です。
分からないことがある場合は障害年金に詳しい人がいる場所を選び、スムーズなやり取りをお願いしましょう。
障害年金の請求が棄却された場合に、不服であれば審査請求ができることもあります。
処分内容に不満があるときは諦めず、専門家に相談してみるといいでしょう。
労働者が労災事故によって、治療を受けても障害が残った場合には、労災保険から、業務災害なら「障害補償給付」、通勤災害なら「障害給付」を受けることができます。
いずれの場合も支給事由と給付内容は同じです。障害の程度と給付内容は1級~14級に区分され定められています。
障害等級の1級~7級は障害補償年金で、8級から14級までは障害補償一時金です。
同一の事由で、労災保険の給付と障害年金の給付が行われることがありますが、その場合は障害年金が全額支給となり、労災保険の給付金が減額されます。
障害基礎年金と障害厚生年金障害(補償)年金の支給を受けている場合の調整率は0.73で、この率に応じて調整された労災保険が給付されます。
障害厚生年金のみの場合は0.83、障害基礎年金のみなら0.88です。
このように調整が行われますが、調整後の労災保険の金額と併給される社会保険の金額を合わせた金額が、調整前の労災保険の金額よりも少なくなるケースでは、調整前の労災保険の金額から併給される社会保険の金額を引いた額が労災保険の給付額になります。
なお、労災の保険給付を受けている期間は「20歳前障害」の障害基礎年金は支給されません。
また、障害年金を受け取っている方が労災保険の遺族補償年金を受け取る場合は、労災保険の給付金は減額されません。
専業主婦の方で第3号に該当する場合は、障害基礎年金が受け取れます。
第3号というのは役所や会社に勤務している厚生年金加入者に扶養されている配偶者のことです。
第3号の被保険者は国民年金保険料を支払わなくても、支払ったものとみなされるため、障害基礎年金も受けることができます。
支給額は1級が974,125円+子の加算、2級が779,300円+子の加算となり、いずれも年額です。
ここで言う「子」とは、18歳になってから最初の3月31日までのお子さんと、19歳以下で障害等級1級または2級のお子さんのことです。
支給額は2人目までが1人あたり224,300円で、3人目以降では1人あたり74,800円です。
子の加算については平成23年の3月までは障害年金の受給権を得た時点で要件を満たしていたお子さんが対象でしたが、平成23年4月からは受給権を得た後に出産したお子さんも対象になっています。
なお、専業主婦は第3号であれば、障害基礎年金を受け取れますが、配偶者が退職したり、自営業になった場合には第3号から第1号に変わるので、手続きをしないと保険料が未払いとなり年金を受け取ることができません。
会社員の配偶者が退職したまたは自営業になった、65歳を過ぎた、死亡した、また会社員の配偶者と離婚したという場合はすぐに手続きをしてください。
65歳以降は、障害等級が2級以上なら老齢厚生年金と障害基礎年金を同時に受け取ることができます。
また、障害厚生年金と障害基礎年金、老齢厚生年金と老齢基礎年金という組み合わせも可能です。
どの組み合わせが有利かは状況によって異なります。
2級で25年以上厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金より老齢厚生年金の方が支給額が高い可能性があるでしょう。
また、障害基礎年金は40年老齢基礎年金を払った時と同じになりますから、老齢厚生年金+障害基礎年金を選択すると支給額が最も多くなります。
厚生年金期間がかなり短いケースでは、障害厚生年金と障害基礎年金の組み合わせを選んだほうが支給額が多くなる可能性が高いです。
3級の方の場合、障害厚生年金と老齢基礎年金という組み合わせが可能ですが、老齢厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせのほうが金額が高くなります。
65歳未満であれば、障害年金か老齢年金かのどちらかを選択します。
3級以上の方なら障害者特例(特別支給の老齢厚生年金)を受けるのが最も有利になります。
障害者特例が受けられるのは現在、厚生年金に未加入の方で、男性なら昭和36年4月1日以前生まれの方、女性なら昭和41年4月1日以前生まれの方です。更に、60歳以上であることや厚生年金に1年以上加入していた、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしているといった要件も満たしている必要があります。
障害年金の手続きをするためには医師の診断書が必要になります。
それで、診断書を書いていただきたいとお願いしたところ、医師から「この症状では障害年金はもらえないでしょう」と言われることがあります。
また、診断書を書くのを渋る医師もいます。
注意したいのは、すべての医師が障害年金や障害年金の認定基準について精通しているわけではないという点です。
あまり詳しくないために、請求しても無理だろうと判断することがあります。
ですから、障害年金はもらえないと言われても、すぐに鵜呑みにするのではなく、専門家に相談するのがベストです。
実際に、医師から障害年金はもらえないと言われた精神疾患の方が社労士に相談したところ、結果として2級の判定を受けたというケースもあります。
診断書を書いてもらえたとしても、医師の書き方によっては、請求が通らないこともありますし、2級になるべきところが3級にされてしまうということもあります。
また、障害年金の認定を受けるには、日常生活にどれほど支障をきたしているかがポイントになりますが、ご本人が医師にそのことを正確に使えられなかったため、軽めの診断書になり障害者年金が受けられなかったということもあります。
経験豊富な社労士なら、的確な診断書を書いてもらうためのアドバイスをしてくれますし、手続きも不備のないように助けてくれます。
障害年金制度は、初めて内容を詳しく知ろうとする場合とても複雑で難しいといえます。
請求の際に必要な書類も多岐に渡り、相当の準備を必要とします。
本人や家族だけでは困難な場合は専門家や行政との連携により手続きを進めていきましょう。
そして、最低限の知識を正しく理解しておきましょう。
定義づけられた用語や基準となる日がいつなのかということを知っておくと、障害年金の内容を正確に把握できます。
また、今は必要がない人も障害年金の受給には公的年金の保険料納付が条件となっていますので、公的年金の保険料を滞納することなく保険料を納付するよう心がけてください。
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